助成金を睨んだ特許出願のタイミング

今日はまったくもって邪道な話をします。もしかしたら同僚が事務所ブログに同じようなこと書くかもしれませんが、私が先に書いちゃいます。

世界で戦おうとするスタートアップなら、外国でも特許を押さえておかないといけません。でも外国出願はお金がかかります。すごいザックリ感でいうと出願にかかる費用が1ヶ国あたり100万円弱くらい。創業したてのスタートアップにはなかなか厳しい金額かもしれません。

そんなスタートアップ(や中小企業)のために、各都道府県が外国特許出願の助成金事業をやっていたりします。例えば東京都では東京都知的財産総合センターというところがやっています。東京都では、外国出願費用の1/2(最大300万円)が助成金として交付されます。大きいですね。

都道府県によって事情は異なりますが、東京都の場合だと、採択率はどうやら例年50%くらいらしいです。助成金を申請しても半分くらいの人は落ちちゃうわけですね。で、どういう観点で審査されるかっていると、東京都の募集要項では観点が5項目挙げられていて、そのうちの一つが「特許性」です。つまり特許になりそうなのかどうなのか、という点が審査項目の一つであり、当然、特許になりそうな案件の方が加点があるものと思われます。「特許になりそう」ということを主張するための根拠はいくつかありますが、代表的なものは(ア)基礎の日本出願が既に特許になっている、又は(イ)PCTの国際調査報告で肯定的な見解つまり「進歩性有り」と判断された請求項がある、のいずれかになろうかと思います。

(ア)については、特許庁のベンチャー対応面接活用早期審査とか、ベンチャー対応スーパー早期審査とかを活用すれば、基礎の日本出願から1年程度で特許査定をもらう、というのはほぼ問題なくいけると思います。少し困るのは(イ)を使おうとするときです。これは、基礎出願の無い、直PCT出願が該当します。

直PCT出願については、ほけー…とただ漫然と手続してると助成金を申請するタイミングで「特許になりそう」という確証が得られている状態にもっていくのは難しいので、このあたりちゃんと考えた方がよいです。東京都の場合、助成金申請期間のウインドウは2回あって、1回目が4月~7月上旬、2回目が7月中旬~11月です(2019年は11月15日締切)。助成対象期間は申請した年の4月1日から2年後の11月30日までで、この期間に実際に発生した費用の半額(上限300万円)が、この期間が終わった後で交付されます。つまり、PCT出願の費用を助成してもらう確率を高めるには、(1)4月以降に出願手続をしつつ、(2)11月15日までに「進歩性有り」の国際調査報告をもらう、というのがよいのですがこのスケジュールだと出願時の請求項が勝負になる可能性が大であり補正とか反論とかのチャンスがありません。

ということで、このあたり巻きで進めるには、4月に直PCT出願をしたら国際調査報告を待たずにさっさと日本に国内移行&ベンチャー対応面接活用早期審査請求をして、11月までに特許査定をもらえるように頑張った方がよいです。うまくいけば1ヶ月くらいで特許査定がもらえます。ここでちょっと困るのが、そもそもPCT出願の費用を助成してもらおうとすると、出願手続ができる期間のウインドウが結構せまい問題が立ちはだかります。出願から特許査定まで多少余裕を見て3ヶ月とすると、助成金の対象になるのは1年のうち4月~7月に出願したものだけ!?みたいなことになります。そーすると、2月くらいに出願の準備ができたとしても、助成金のこと考えたら4月まで待った方がいいのか…?みたいになっちゃいます。

なんかこんなこと考えても、別に助成金もらうために特許出してるわけじゃないし!そもそもメインの助成対象はPCT出願じゃなくて外国への移行費用だし!てゆうか来週プレス発表だからさっさと出願しないといけないし!ということだと思いますので、あくまで邪道なお話ということでご理解のほどお願いします。

あと、そもそも助成金の募集要項とか募集時期とか助成対象期間とか助成対象費用とかは各都道府県で事情が異なるので、よい子のみんなは真似しないでね!と言っておきます。